ポイント
子宮筋腫を理解するために必要な知識を先に説明します。ポイントを読んで頂ければ、筋腫の事は大体理解出来ると思います。
最も大切な事は、「子宮筋腫」と診断されたら、「子宮肉腫」では無いことを確認すること。「子宮肉腫」は癌より進行が早く、治療が遅れると致命的です。先ずは、「私の腫瘍は子宮筋腫ですか、肉腫ではないですね」と担当医に確認して下さい。明確な返答が無ければ、2nd opinionを受けましょう。
「子宮肉腫」でないことを確認し、間違いなく「子宮筋腫」と診断されたら、次に大切なことは、子宮筋腫の出来ている場所です(図1)。大きさや数は二の次です。「場所」とは、子宮の右とか左とか、前とか後ろとかではありません。子宮の内側にある粘膜を子宮内膜といいます。子宮内膜は赤ちゃんのベッドですから、妊娠すると剥げ落ちません。妊娠しないと毎月剥げ落ちて外に出て来ます。この生理現象を「月経」と言います。この子宮内膜と筋腫との位置関係が大切です。子宮内膜(粘膜)の直下に筋腫が出来て成長していくと、子宮内膜(粘膜)を下から持ち上げて無理矢理子宮内膜(粘膜)を押し剥がすので、想像出来ないくらいの大量出血をもたらします。このような子宮内膜(粘膜)の直下に出来る筋腫を「粘膜下筋腫」と呼びます。筋腫全体の約10%。子宮内膜の直下に筋腫があると、その部分の内膜には赤ちゃん(受精卵)は着床しにくく、不妊症や流産の原因にもなります。子宮筋腫の中で一番困るのが、この「粘膜下筋腫」です。小さくても油断できません。長径1cmでも大量出血する場合があります。長径5mmでも低用量pillを服用して女性ホルモン(Estradiol=E2)を減らすか、黄体Hormone剤で女性ホルモン(Estradiol=E2)の作用を抑えるホルモン治療が必要です。多くの場合、TCR(Trans Cervical Resection; 経頸管的切除術)という経膣手術による摘出手術が必要になります。粘膜下筋腫が膣の方に成長して(伸びてきて)子宮口から膣に出てくることがあります。赤ちゃんを産むのと似ているので「筋腫分娩」と呼ばれています。これも大量出血の原因となり危険な筋腫で、多くの場合TCRによる摘出手術が必要です。
一方、筋腫が子宮内膜とは反対側(外向き)に成長する筋腫(漿膜下筋腫)は子宮内膜(粘膜)から離れているので、大きくなっても月経に関する症状はありません。筋腫全体の約20%。漿膜下筋腫は長径10cm以上の大きさでも基本的に手術は不要です。但し、例外的に漿膜下筋腫で手術が必要になる場合が2つあります。一つは筋腫が捻転して痛みがある場合(子宮筋腫の茎捻転)です。もう一つは、無症状で婦人科を何年も受診しないため筋腫が巨大(長径15cm以上)になり、下肢深部静脈を圧迫して血栓(深部静脈血栓症)のriskがあると判断された場合です。
粘膜下筋腫と漿膜下筋腫の中間的な場所に出来る筋腫が筋層内筋腫です。子宮筋腫のなかで最も多く全筋腫の約70%を占めます。多発しやすいのも特徴です。多くは遺伝性です。筋腫が子宮筋層内に出来て発育します。発育方向は、内側、外側両方です。子宮の外側にむかって(外向性)に発育すれば、漿膜下筋腫と同じ症状と管理方法、子宮の内膜側に向かって(内向性)に発育すれば、粘膜下筋腫と同じような症状で同じ治療になります。外側に発育してくれる方が良いです。以上、筋腫は内側に発育していく程、良くないことを理解して頂ければ有り難いです。
図1 子宮筋腫の場所と症状
治療方法には、ホルモン療法と手術療法がありますが、子宮筋腫は癌ではないので、基本的に手術は不要です。子宮筋腫は女性ホルモン(Estradiol=E2)に依存する(女性ホルモンが筋腫の餌になる)病気ですから、女性ホルモン(Estradiol=E2)を管理するホルモン療法が治療の主体となります。ホルモン療法には、女性ホルモン(Estradiol=E2)を減らすだけの比較的優しい治療(低用量pill)、女性ホルモン(Estradiol=E2)の働きを抑える黄体ホルモン療法、さらには女性ホルモンを限りなくゼロにするLH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射、リュープリン注射)またはLH-RH(Gn-RH)antagonist(レルミナ錠)による最も有効な偽閉経療法の3種類があります。女性ホルモン(Estradiol=E2)は食べ物と関連がありますので、食事管理(dietary management)は予防、治療の両面で重要です。厳重な食事管理とホルモン療法を行っても管理不能な場合、例外的に手術が行われます。
子宮全摘は子宮筋腫の根治療法ですが、本当に必要か適応をよく考えて、手術を受けるか決めて下さい。子宮全摘の術中術後の合併症(尿管損傷、膀胱損傷、腸損傷、術後腹腔内癒着、腸閉塞、膣出血、膣壁の肉芽腫など)は決して希ではありません。子宮全摘の手術術式によっては、将来直腸癌を発症した場合、直腸周囲のリンパ節郭清が困難になり、癌手術の根治性が低下する場合もあります。筋腫は癌ではないので、子宮全摘が必要になる場合は本当に少ないです。日本では子宮筋腫に対する子宮全摘を行い過ぎる傾向があります。子宮全摘が必要と説明されたら、2nd opinionを受けることをお勧めします。
子宮筋腫核出術は、治療目的に合わせて有害な筋腫のみを取り除く手術であり、無害な筋腫を含めて、筋腫全てを取り除く事が目的ではありません。多くの場合、術後も小さい(無害な)筋腫は残っています。摘出する筋腫の数が多い程、再発し易いです。術後1-3年で元の状態に戻ることもあります。術後は再発予防の厳重管理が必要です。先ずは食事管理(赤い肉を食べない、豆乳を飲まない、アブラナ科の野菜を摂る等)です。そして、Estradiol(E2)を下げる低用量pillを内服するか、Estradiol(E2)の作用を抑える黄体ホルモン剤を内服します。もっと有効な方法は、術後直ちに、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス、またはリュープリン)による偽閉経療法を4-6回行い、その後に低用量pillか黄体ホルモン剤を長期内服します。このような術後管理をしても核出された筋腫の数が多い場合は、再発することが少なくありません。多発性筋腫では、核出される筋腫の数が30~40個以上になる場合もあります。このような多数の筋腫核出が患者様にとって意味があるのか疑問になるcaseもあります。筋腫核出術は、人生で一度だけにして下さい。一回の手術でも腹腔内の癒着が起こることがあります。二回以上筋腫核出術を行うと腹腔内の癒着はより広範囲になる可能性があり、将来腸閉塞などを発症するriskが高くなります。また子宮の筋層に2度もメスで操作すると筋層が弱くなり、将来の妊娠で子宮破裂などの重篤な合併症を起こすこともあります。子宮筋腫に対する複数回手術は絶対に避けるべきです。子宮筋腫のみを摘出する「子宮筋腫核出術」はあくまでも補助療法であり、根治療法ではありません。Hormone治療なくして、子宮筋腫の管理は出来ません。例外があります。大きい筋腫が1個だけの場合、子宮筋腫核出後、しばらく再発しない場合も希にあります。手術で両側の卵巣を摘出すれば、女性ホルモン(Estradiol=E2)の分泌が無くなるので、子宮筋腫は再発しません。「両側卵巣摘出術(子宮は残す)」は手術的ホルモン療法で、子宮筋腫に対する根治術のoptionです。子宮全摘と比較し難易度が低く、手術合併症も少なく、患者様の負担も少ない術式です。理論的には安全で極めて有効ですが、実際に行われる事は稀です。以上、子宮筋腫に対する治療の主体はホルモン療法であることを理解して頂きたいです。さて、以上の説明で筋腫の基礎知識は理解できたと思います。これから筋腫の具体的な説明をします。
子宮は単純な臓器です。内側が粘膜(内側の粘膜なので内膜と呼ぶ)。外側が内膜(粘膜)を包み込むように守る筋肉(子宮筋層)です。子宮は内側の子宮内膜(粘膜)と外側の子宮筋層の二つの組織から出来ています。表1に示した様に、内膜(粘膜)に出来るものは人間(妊娠)か腫瘍(ポリープ=良性、内膜癌=悪性)、外側の子宮筋層に出来る物は、筋腫(良性)か、肉腫(悪性)です。詳細な全国調査は行われていませんが、筋腫の発生率は、20代後半女性の10%以上(10人に一人以上)、30代女性では30%以上(3人に一人以上)と推定されており、非常にありふれた良性腫瘍です。医療機器(超音波やMRI)の進歩により、発見率が高くなっていますが、それだけで無く、食生活の欧米化、出産回数の低下などlife styleの変化が筋腫増加の一因と考えられます。筋腫自体が悪性に変化することはありません。
表1:子宮体部にできるもの
最も大切な事は、「子宮筋腫」と診断されたら、「子宮肉腫」では無いことを確認すること。「子宮肉腫」は癌より進行が早く、治療が遅れると致命的です。誤診や見逃しも希ではありません。先ずは、「私の腫瘍は子宮筋腫ですか、肉腫ではないですね」と担当医に確認すること。肉腫か子宮筋腫かの確定診断には、病理組織検査が必要。手術で子宮を全摘(あるいは腫瘍の核出)をしないと確定診断は出来ません。但し、経験豊富な婦人科医及び放射線診断医は、超音波検査やMRI検査で診断可能です(100%ではありませんが)。表2のように、子宮肉腫の多くは40代から発症し、腫瘍の数は1個(沢山あれば筋腫)、血液中のLDH(LD)が異常高値、超音波やMRIで変性や腫瘍内出血の所見がある等、医師が「肉腫」を意識して検査すると95%以上は診断可能です。但し、1-5%程度は確定できない場合もあります。その場合は短期間に再検して、腫瘍が増大しないか、変性所見が更に変化しないか等、注意深く観察すれば診断は可能です。それでも肉腫の可能性が否定出来ない場合は、子宮全摘を行い、病理診断で確定します。定期的診察(通院)の過程で「肉腫」というkey wordが一度も出てこない 場合は2nd opinionを受けた方が良いと思います。
表2 子宮筋腫と子宮肉腫
1) 原因:筋腫1個のみの場合は突然変異です。複数(2個以上)の場合は遺伝性です。母親に多発性筋腫があった場合、娘に多発性筋腫が発生する可能性が高いです。肝臓から分泌されるinsulin-like growth factor(IGF-1)は筋肉に作用し、筋腫の発生に関わっていることが分かってきましたが、現時点でこのIGF-1を管理する方法がないので、対策は研究段階です。卵巣から分泌される女性ホルモンには、月経周期の前半に分泌される卵胞ホルモン(Estradiol=E2:赤ちゃんのベッドである子宮内膜を作る女性的なHormone)と、月経周期後半に出てくる黄体ホルモン(Progesterone:E2が作った子宮内膜を柔らかくして受精卵が着床しやすくする男性的なホルモン)があります。Estradiol(E2)は筋腫や子宮内膜症などを進行(悪化)させます。一方、Progesterone(黄体ホルモン)は、子宮筋腫(子宮内膜症も)に対するEstradiol(E2)の成長促進作用(悪影響)を制限します。即ち、子宮筋腫(子宮内膜症も)は月経周期の前半に卵胞ホルモン(Estradiol:E2)の影響を受けてグッと大きくなり、月経周期の後半に黄体ホルモン(Progesterone)の影響で成長が止まるか少しだけ縮小します。このcycleを繰り返しながら、筋腫は(子宮内膜症も)確実に大きくなって行きます。筋肉細胞のEstradiol(E2)に対する感受性が強いか、Estradiol(E2)の量がProgesterone(黄体ホルモン)に比べ過剰か、が原因の一つですが、子宮の筋肉細胞のEstradiol(E2)に対する感受性を自分で下げることは出来ません。しかしながら、自身の体内の血液中のEstradiol(E2)を管理することは不可能ではありません。危険因子の排除に努めて下さい。
2) 危険因子:初潮が早い、肥満、Vitamin D欠乏、赤い肉(4足の肉)を食べ過ぎ、豆乳取り過ぎ、緑の野菜(特にアブラナ科)欠乏、果物(柑橘類)の欠乏、飲酒のなかではBeer(Non-alcohol Beerも)の飲み過ぎ等が危険因子です。Beerを作る際の主成分であるホップと大麦に植物Estrogenが含まれているからです。またBeerはprolactinの分泌を増やしてHormone balanceを不整にする可能性もあります。アルコールの中でBeerだけは控えめにして下さい。これらの危険因子を排除して下さい。筋腫と診断されたら、小さくても、いずれ必ず大きくなります。将来お金と時間がかかる治療を受けたくなかったら、本気で食事管理(dietary management)をして下さい。
3) 子宮筋腫(子宮内膜症)に対する食事管理(dietary management):子宮筋腫(子宮内膜症も)はどのタイプであっても、月経周期がある(女性ホルモン:Estradiol=E2が分泌されている)期間は、毎月成長(進行)して行きます。大きくさせないためには、ホルモン療法以前に、自分で出来る食生活の管理が必要です。食事管理の基本は以下の通りです。赤い肉(4足の肉、加工品)を食べない、タンパク質摂取は魚と二本足の肉(鶏肉、鴨肉など)をmainにする。豆乳は飲まない(豆乳以外のIsoflavoneは普通に摂取しても問題なし)、Alcohol好きな人は、Beerだけは減らす。赤ワインは抗酸化物質の一種flavonoids=polyphenol(抗estrogen作用あり)とresveratrol (レスベラトロール:潜在的癌予防効果あり)を含んでおり制限不要で、むしろ適量飲んだ方が良い。Vitamin Dを含む食事(魚とキノコ類等)を積極的に摂取する。野菜、特にアブラナ科の野菜に含まれるflavonoids(フラボノイド)はEstrogen(卵胞Hormone)合成をブロックし、筋腫の成長を抑えます。中でもケール、ブロッコリ、カリフラワー(インドール3カルビノール:Indole-3-carbinolを含む)は筋腫の抑制作用が強いと科学的に証明されています。
糖尿病、高脂血症、痛風などの代謝病だけでなく、癌を含め多くの疾患が食事療法で予防、改善できます。本来、食事療法は、病気の管理(治療)の一部として欠かせないものであり、米国では説明にかなりの時間をかける病院(医院)もあります。子宮筋腫のみならず、女性ホルモン依存性疾患(子宮内膜症、子宮内膜癌=子宮体癌、子宮内膜ポリープ、乳癌等)では、自分で出来る治療として食事管理が重要です。
子宮筋腫の症状は発生部位(出来ている場所)により決まります。部位別症状の図1を参考にして頂ければ有り難いです。子宮筋腫の3要素は、大きさ、数、場所(表3)ですが、筋腫のサイズ、こぶの数よりも、出来ている場所が大切です。場所とは、上とか下とか、前とか後ろとかでは無く、子宮内膜との位置関係です。
表3 子宮筋腫の3要素
図1 子宮筋腫の場所と症状
筋腫で一番症状が出るのが「粘膜下筋腫」です。筋腫全体の約10%。筋腫が受精卵(赤ちゃん)のベッドである子宮内膜の直下の筋肉層から発生し、子宮の内側(内腔)に向けて子宮内膜を持ち上げるように発育します。粘膜下筋腫は赤ちゃんのベッドである大切な子宮内膜を下から持ち上げて押し剥がすように成長するので本当に困ります。小さい筋腫(長径1cm前後)でも、想像出来ないくらいの過多月経(超大量出血)を引き起こす可能性があります。当然受精卵の着床の障害にもなり得るので、不妊症や流早産の原因にもなります。
粘膜下筋腫は診断されたら、長径5mmでも直ちに治療が必要です。無症状でも、女性ホルモンEstradiol(E2)を減らす低用量pillかEstradiol(E2)の作用を抑える黄体ホルモン剤を服用すべきです。発見時に無症状あるいは本人にとって支障のない過多月経であっても、近いうちに大量出血する可能性があるからです。同時に厳重な食事管理をします。これでしばらくは持ちこたえると思います。ただし、低用量pillは女性ホルモンEstradiol(E2)を下げるだけです。また黄体ホルモン剤を服用すると月経は来ませんが、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックスやリュープリン)による偽閉経療法程の効果はないので、筋腫は大きくなりにくいですが、縮小効果は期待出来ません。低用量pill服用や黄体ホルモン療法に食事管理を徹底する(赤い肉禁止、豆乳禁止、アブラナ科の野菜を摂取する)と、筋腫の成長抑制効果は上がります(希に小さくなることあり)。それでも女性ホルモンEstradiol(E2)がゼロではない(閉経療法では無い)ので、徐々に粘膜下筋腫は大きくなり、やがて低用量pillや黄体ホルモン剤による治療は限界になり(月経量が増えてきて貧血を発症)、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックスやリュープリン)による偽閉経療法が必要になってくる場合が多いです。
40-45歳以上で、以下に述べるお腹を切らない手術(TCR)も含め、とにかく手術だけは避けたいという方は、食事管理を厳重にした上で、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックスやリュープリン)による偽閉経療法を保険適用内で粘り強く続けて、粘膜下筋腫を出来る限り小さくして(低用量pillや黄体ホルモン剤も利用)、何とか閉経まで持ちこたえて逃げ切れる場合もあります。
根本的な治療は粘膜下筋腫の摘出ですが、いきなり摘出すると術中出血量が多くなることから、手術の前にLH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射、リュープリン注射)治療を4-6回行い、子宮への血流を少なくして、また筋腫を少しでも小さくして手術を行う方が安全で、大切な子宮内膜へのdamage(影響)も少なくなります。術前ホルモン療法で気を付ける事が一つあります。LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射、リュープリン注射)は初回注射後flare up現象により大出血のriskがあります。これを回避するには、Gn-RH agonist注射前に低用量pillを服用して、低用量pillの1-3列目でGn-RH agonistを接種するとflare up現象は改善するか起こりにくくなります。または、Gn-RH agonistではなく、似て異なるGn-RH antagonist(レルミナ)の内服だとflare upは起きません。ただし、24時間毎に時間を守って内服する必要があります。服用忘れ、内服時間がずれると、術前治療が上手くいかない可能性があります。
手術はお腹を切るのではなく、膣からのapproachによる経頚管的切除術(TCR:Transcervical resection)という方法で、筋腫の根本を電気凝固により切除する方法が推奨されます。再発率が高いので、術後は女性ホルモン(Estradiol=E2)を下げるために低容量ピルを服用するか、Estradiol(E2)の作用を抑える黄体ホルモン剤を内服して再発予防することが大切です。
粘膜下筋腫の一種です。粘膜下筋腫のこぶが下方に伸びてきて膣に脱出した場合の呼び方です。赤ちゃんが子宮から出てくるように筋腫のこぶが出てくるので「筋腫分娩」という表現をします。「筋腫分娩」は月経とは無関係に不正出血を起こし、大きくなると大出血を起こすこともあります。これを頸管ポリープと間違えて、鉗子で捻じり切ると大量出血を起こしますから、鉗子での手術は禁忌です。子宮鏡で観察しながら根本を糸で結紮して切除するか、経頚管的切除術(TCR:Transcervical resection)により筋腫の根本を電気凝固により切除する方法が推奨されます。
いずれにしても膣からのapproachですから、お腹は切りません。ただし、日本では入院手術になることが多いです(1-2泊)。大切なことは、術後に病理の結果を担当医から説明してもらい、肉腫で無い事を確認し、そのreport(書類)をもらうことです。手術(TCR)で筋腫を根本から摘出しても再発の可能性があります。従って、術後は低用量Pill、または黄体Hormone剤を内服することを推奨します。
癌に見えて、癌ではない粘膜下筋腫の一種です。子宮内膜癌(=子宮体癌)と誤診されて子宮や卵巣を摘出してしまうことがあります。本来子宮全摘は不要です。実際の患者数は不明ですが、今日まで全国で相当数のcasesが子宮内膜癌(=子宮体癌)と誤診されて、子宮全摘を受けていると推定されます。癌ではありません。実態は粘膜下筋腫と同じです。子宮筋腫の筋層内に子宮内膜の腺組織が混入(迷入)している状態です。内膜が本来あるべきところから、違う場所に混入(迷入)して居心地が良くないために腺組織の顔つきが変わって癌のように見えてしまうという良性の病気です。APAMの筋層内の子宮内膜が、通常の子宮内膜より癌化のriskが高いかは証明されていません。
治療は、TCR(Trans Cervical Resection: 経頸管的切除術)です。お腹を切るのではなく、膣経由で行われます。子宮鏡で観察しながら、電気で腫瘤を切除します。基本的には、粘膜下筋腫と同じ扱いです。当然再発しやすいので、術後直ちに妊娠希望がない場合は、再発予防に低用量pillを内服して女性ホルモン(Estradiol=E2)を減らすか、黄体ホルモン剤を内服して女性ホルモン(Estradiol=E2)作用を抑える治療が必要です。低用量ピルは妊娠希望の直前まで服用、終了した直後は妊娠しやすくなります。APAMが原因で妊娠できないということはありません。治療(管理)をすれば、普通に妊娠可能です。分娩も普通に経膣で可能です。
子宮を覆う薄い膜(漿膜)の直下に発生し、外に向かって発育する筋腫。筋腫全体の20%。子宮内膜から離れており、外側に向かって発育するために、過多月経や月経が長引く等の月経困難症はありません。殆どの場合無症状で、困ることはありません。妊娠の成立にも影響ありません。妊娠経過中は、女性ホルモンEstrogen(Estriol=E3)が著増するので筋腫の大きさ(長径)が2倍以上になります。妊娠前の長径が10cm以上あると、双子のようにお腹の張りが強くなることもあります。ところが大きくなっても柔らかくなるので、意外と問題になることが少ないです。ただし、もともと長径10cm以上ある漿膜下筋腫では、妊娠中に変性して重篤な炎症を起こすこともあります。予定日の40週まで持たない事もあります。妊娠希望があれば長径10cm以上の筋腫は漿膜下でも妊娠する前に筋腫の摘出を受けた方が安全です。長径10cm未満の漿膜下筋腫は絶対手術が必要という訳ではありません。Case by caseで担当医と相談して下さい。長径5-6cm以下の場合は妊娠希望があっても摘出不要です。
漿膜下筋腫は徐々に大きくなるため、長径10 cmくらいの大きさでも自覚症状がない場合が多いです。どこに出来ても漿膜下筋腫では月経に関する症状はありませんが、子宮の前方にあると、前にある膀胱を後ろから圧排するので、頻尿になります。入眠後起床までに2回以上起きて排尿するようなら異常として治療が必要です。また、後方に成長すると直腸を圧排して便秘になると考えがちですが、筋腫が原因の便秘は稀です。側方に成長する場合も無症状が多いです。子宮の上の方に成長する場合は、柔らかく可動性のある胃や腸しかないので長径15cmくらいの大きさでも無症状である場合が多いです。これまで上方にある筋腫で無症状の最大径は29cm (30歳の女性)が最高でした。本人は最近「太ったのかな」と思ったそうです。頻尿以外に無症状の事が多く、生活に支障がないため婦人科受診することも少なく、巨大化することが多いのが漿膜下筋腫の特徴です。
正常な子宮の筋肉層と漿膜下筋腫が細い茎でつながっていると、茎を軸にして捻れることがあります(漿膜下筋腫の茎捻転)。捻転時は、腹痛があり(充実性卵巣腫瘍の茎捻転ほどの激痛ではありません)、手術適応になります。勿論、筋腫だけを切除して子宮は残ります。子宮の筋層にメスは入らないので、この手術が理由で帝王切開になることはありません。
漿膜下筋腫で気を付けなければならない事がもう一つあります。稀ですが、筋腫が巨大(>15 cm)になると、足の方から心臓に戻る皮膚から見えない深い所にある静脈を圧迫して血流を阻害し(血液の流れが止まり)、血の塊(=血栓)が出来きて、血管が詰まることがあります。これが生命を脅かす「深部静脈血栓症(Deep Vein thrombosis:DVT)」です。下肢の血液が心臓に向かって行かず下肢にたまるので、片方のふくらはぎや足がむくんだりして、これに炎症が加わると「片下肢のむくみ」に「疼痛」が加わります。緊急受診が必要です。「深部静脈血栓症」は深いところにある静脈に起こるので、皮膚を通して見ることはできません。血管が詰まったままならいいのですが、血管壁にへばりついていた血の塊(血栓)が足の筋肉の動きで血管から剥がれてしまって血流れに乗り、右心房->右心室を経由して肺動脈まで運ばれ肺動脈が閉塞すると、呼吸により外に出すべき二酸化炭素(CO2)と酸素(O2)の交換が出来なくなり呼吸困難になるのが「肺血栓塞栓症(Pulmonary Thromboembolism:PTE)」です。「肺血栓塞栓症」は同じく血栓症である「心筋梗塞」や「脳梗塞」と比較しても死亡率が高い危険な病気です。いわゆる「エコノミークラス症候群」も「肺血栓塞栓症」です。深部静脈血栓症(DVT)の症状が出たら、厳重に血栓対策をした上で、手術(巨大漿膜下筋腫切除または子宮全摘)を行います。
余談ですが、似たような疾患で「血栓性静脈炎」という病気があります。これは表在(皮膚直下)の静脈に、まず炎症が起きて、次に血栓が形成されます。皮膚の表面に近い静脈に起こるので表在静脈の発赤が見えます。静脈瘤、外傷が原因となることがありますが、原因不明も多いです。炎症を起こした血管を押さえると痛いです。見た目は派手ですが、肺塞栓を発症することは先ずありません。消炎鎮痛剤、抗生剤で治ります。抗血栓療法は不要です。「血栓性静脈炎」と「深部静脈血栓症:DVT)」とは病態が、異なりますので、ご自分でも勉強して頂きたいです。
「巨大筋腫が下肢の静脈を圧迫する」「深部静脈血栓症」「肺血栓塞栓症」と言われても分かりにくいでしょうが、「片足がむくむ」事が単に「むくみ易い」とか簡単に考えないで、「片足がむくむ」症状がある場合、深部静脈血栓症(DVT)の可能性があり、直ちに血管外科またはかかりつけの医師を受診して下さい。血液検査 (d-dimer等)、超音波、MRI、CTなどで診断がつきます。「片足がむくむ」症状を放置すると、時には「命取り」になることを知っておく必要があります。
説明が長くなってしまいましたが、月経や妊娠に影響のない「漿膜下筋腫」でも長径10-15cm以上の巨大筋腫では、妊娠希望がある場合は筋腫のみを切除する方が安全です。妊娠希望がなく、45歳前後以上であると基本的に手術は不要です。腹部膨満など何らかの症状があればLH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックスやリュープリン)による偽閉経療法で筋腫を小さくして閉経を待つ方法で良いと思われます。稀ですが、片下肢がむくんで、痛みもある場合、深部静脈血栓症(DVT)のriskがあるので、その場合は血栓対策をした上で、手術(巨大漿膜下筋腫切除または子宮全摘)が必要であることを理解しておいて下さい。また、10-15cm以上の巨大筋腫と診断された場合、深部静脈血栓症(DVT)予防のため、仰向けに寝ないで、横向きで寝るようにして下さい。
子宮筋腫のなかで最も多く、全筋腫の内約70%を占めます。多発しやすいのも特徴です。多くは遺伝性です。御母様も筋腫があったはずです。筋腫が子宮筋層内に出来て発育します。成長速度も比較的速いです。筋腫の数は5-10個どころか、20-30個以上と増え続けることもあります。発育方向は、内側(内向性)、外側(外向性)両方です。子宮の外側にむかって(外向性)に発育すれば、漿膜下筋腫と同じ症状と治療法です。子宮の内膜側に向かって(内向性)に発育すれば、粘膜下筋腫と同じような症状で同じ治療になります。できれば外向性に発育して欲しいです。いずれの場合も、筋腫の数が多くなると、筋肉の伸展性(しなやかさ)が低下して、月経時の子宮の収縮の障害になるので、月経痛があることが多いです。厳重な食事管理とHormone治療(低用量pillか黄体ホルモン剤)で管理し、手術を回避しましょう。
子宮頸部に近いところ(子宮の出口付近)にできる筋腫です。ここに筋腫ができる確率は少ない(<5%)ですが、頚管(出口)が狭くなり月経血が出にくくなるため、月経痛がひどくなったり、月経の切れが悪くなり月経期間が長引いたりすることもあります。出口が狭くなるので、妊娠すると経膣分娩が困難となり頚部筋腫が原因で帝王切開になる場合もあります。稀に、尿路を閉塞したり、膣内に脱出したりすることもあります。前方に発育すると膀胱を圧迫して頻尿になります。筋腫が小さく無症状の場合、食事管理のみで無治療経過観察も可能です。何らかの症状がある場合は、程度によりますが、低用量pillか黄体ホルモン剤の内服、または、LH-RH(Gn-RH) agonist(ゾラデックス、リュープリン)を先行して、その後に低用量pillか黄体ホルモン剤を内服し、手術を回避するよう管理します。
頚部筋腫で注意することが一つあります。子宮頚部腺癌との鑑別です。筋腫と決めつけず、子宮頚部腺癌でないことを確認する必要があります。頚部筋腫と診断されたら、担当医に「子宮頚部腺癌ではないですよね」と確認して下さい。
・超音波:子宮筋腫の診断に欠かせない最も重要な検査機器です。筋腫の有無、筋腫の性状、出来ている場所(子宮内膜との位置関係)、大きさ、は超音波検査で容易に診断出来ます。経験のある医師なら、肉腫との鑑別も95%以上は可能です。
・MRI:子宮筋腫の診断として最も有効な検査です。この検査の主な目的は、1) 子宮筋腫か子宮肉腫かの鑑別診断、2) 筋腫と子宮内膜との位置関係(妊娠への影響)を理解する、3) ホルモン療法の効果判定、4) 卵巣、卵管の状態を知る、等です。但し、狭いspaceで30分前後仰向けに静止する必要があるため、閉所恐怖症、腰痛のある方には困難です。また、体内に金属を装着している場合、検査を受けることが出来ません。
・CT:被爆しますし、撮影した画像は超音波の方が鮮明です。筋腫の検査でCTを行うことは通常はありません。
完全な予防法はありません。但し、前述した危険因子を排除することにより、筋腫の成長を抑えることは不可能ではありません。食事管理が大切です。以下の食生活の注意事項を守ると筋腫の成長を少しでも抑える事が出来ます。
・Red meat (赤い肉=4足の肉、及びその加工品)は禁止。脂肪の中にあるaromataseを活性化し女性ホルモン(Estrone=E1)を増やすからです。タンパク質は 魚と二本足の肉(鳥、かも等)から摂取して下さい。
・White foods は禁止:白米を食べない(玄米を食べる)、白い食パンを食べない(ライ麦パンを食べる)、白いパスタを食べない(全粒粉パスタを食べる)、その他、白い砂糖、白いクッキー、白いケーキ等を控える。
・イソフラボン(Isoflavone)の中で、豆乳だけは飲まない(豆乳以外のIsoflavoneは制限無し)。
・Alcoholの中では、Beerだけは減らす。Beerを作る際の主成分であるホップと大麦に植物Estrogenが含まれているからです。またBeerはprolactinの分泌を増やしてHormone balanceを不整にする可能性もあります。アルコールの中でBeerだけは控えめにして下さい。
・アブラナ科の野菜(ケール、ブロッコリー、カリフラワー、ルコラ、キャベツ、白菜、大根など)を食べる。
・柑橘系の果物を食べる
・Vitamin D、またはVitamin Dを含む食事(魚類、キノコ類等)を積極的に摂取する
・低容量ピルを10代から服用する。
子宮筋腫の治療には、ホルモン療法と手術療法がありますが、子宮筋腫は癌ではないので、基本的に手術は不要です。子宮筋腫は女性ホルモン(Estradiol=E2)に依存する(女性ホルモンが筋腫の餌になる)病気ですから、女性ホルモン(Estradiol=E2)を管理するホルモン療法が治療の主体となります。ホルモン療法には、女性ホルモン(Estradiol=E2)を減らすだけの比較的優しい治療(低用量pill)、 女性ホルモン(Estradiol=E2)の働きを抑える黄体ホルモン療法、さらには女性ホルモンを限りなくゼロにするLH-RH(Gn-RH) agonist(ゾラデックス注射、リュープリン注射)またはLH-RH(Gn-RH) antagonist(レルミナ錠)による最も有効な偽閉経療法の3種類があります。女性ホルモン(Estradiol=E2)は食べ物と関連がありますので、食事管理(dietary management)は予防、治療の両面で重要です。厳重な食事管理とホルモン療法では管理不能な場合、例外的に手術が行われます。
例外的に行われる手術、即ち手術を受けなければならない場合は、以下の5つです。
・子宮肉腫と診断、及び子宮肉腫の可能性が高い場合 ->子宮全摘
・子宮筋腫(漿膜下筋腫)の茎捻転 ->筋腫切除(子宮は残す)
・巨大筋腫 (長径が15~20cm以上)で深部静脈血栓症(DVT)や、筋腫の変性、壊死による出血や感染などの合併症を起こす可能性ありと判断された場合 ->子宮全摘(または漿膜下筋腫切除)
・筋層内子宮筋腫(多発性、内向性発育)で妊娠の成立に障害となる筋腫(不妊症、不育症)、妊娠の経過に影響(早産)する可能性が高い筋腫、およびホルモン療法で管理不能な月経困難症を有する筋腫の場合->筋腫核出(子宮は残す)
・粘膜下筋腫、APAM、筋腫分娩->TCR(経頚管的切除術)
子宮筋腫の治療法について一通り紹介しますが、当院の治療方針は、基本的に手術はしない(手術は本当に必要な場合にのみ行う)。「食事管理とホルモン療法で治す」です。
治療の選択は、妊娠希望の有無、年齢、合併症(持病)の有無、家族歴、体型、喫煙の有無、本人の考え方(人生観)などを考慮してbestの方法を決定する必要があります。癌ではないので、「深部静脈血栓症(DVT)」の可能性がある場合等以外では、緊急治療の必要はありません。当院から患者様の状態にとって必要な情報とbestと考えられる治療法を提示しますので、納得できるまで考えて御自身で治療法を決定して下さい。
子宮筋腫は癌ではないので、本来手術は不要です。ましてや妊娠の希望がないのに手術を受けるのは本当にもったいないです。なるべく手術をしないで管理します。
・筋層内筋腫や漿膜下筋腫で、筋腫が小さく(5cm以下)、症状が無い、または軽症の場合:食事管理のみ、またはそれと低用量pill(または黄体ホルモン剤)内服で閉経まで管理します。
・筋層内筋腫や漿膜下筋腫で、筋腫が大きく(5-10cm以上)、月経困難症(月経過多による貧血、月経痛、頻尿など)が強く生活に支障がある場合:食事管理に加え、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射、またはリュープリン注射)による偽閉経療法を先行します。下腹部の脂肪が多い部位に4-6週毎に注射します。6回連続(6-8か月)が1クールとされています。筋腫は小さくなり、月経過多、生理痛などの月経困難症は消失し、頻尿も改善し、楽になります。1クール後、超音波、MRI、血液検査等で効果判定します。追加治療するか、その後は低用量pill(または黄体ホルモン剤)で管理するか等は、ご本人の希望を考慮します。
保険適用を最大限活用して偽閉経療法を繰り返し行い、偽閉経療法をしない間は筋腫が元に戻らないよう低用量pill(または黄体ホルモン剤)で管理し、手術をしないで逃げ切ります。偽閉経療法->低用量pill(または黄体ホルモン剤)->偽閉経療法の繰り返しです。偽閉経療法は本来乳癌の薬ですから、この方法で筋腫を管理した場合、女性ホルモンが原因の乳癌(全乳癌の80%)の予防が確実に出来ます。低用量pill(または黄体ホルモン剤)服用の期間も含めて、乳癌に加え、卵巣癌、子宮内膜癌(体癌)の予防も可能で、大腸癌のriskも低下します。これら4つは女性に多い癌ですから、偽閉経療法は良いこと尽くめです。
子宮筋腫があるために、偽閉経療法を中心としたホルモン療法を受けている人の方が、筋腫がなくてホルモン治療を受けていない健康な女性よりも、癌予防が出来て安心という、ちょっと皮肉な事になります。「子宮筋腫が出来てかえって良かった」とも考えられます。
・筋層内筋腫や漿膜下筋腫で、筋腫が小さく(5cm以下)、症状が無い、または軽症の場合:低用量pill(または黄体ホルモン剤)で妊娠希望まで管理します。
・粘膜下筋腫、筋層内筋腫や漿膜下筋腫でも、将来の妊娠の経過に悪影響を与えると判断される場合:LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射、またはリュープリン注射)による偽閉経療法を直ちに開始。時間的余裕があれば、保険適用を最大限活用して偽閉経療法を続けて筋腫の縮小を図る。著効すれば手術不要となる場合もあります。妊娠希望時期まで時間的余裕が無い場合、あるいは偽閉経療法で縮小しても妊娠の経過に影響があると判断された場合、偽閉経療法後に手術(筋腫の核出、切除)を行います
ホルモン療法と手術療法以外の特殊な方法は、単独で完治する方法ではありません。治療例も少なく、安全性、効果の持続期間、長期予後などが確立されていません。特殊治療を希望される場合は相談させて頂いた上で、ご希望があれば紹介致します。
1) 低容量ピル(内服)
筋腫に対する低用量pillの役割は、妊娠希望の有無に関わらず、比較的小さい筋腫(< 5cm)を長期間(数年以上)管理することです。月経困難症(生理痛、月経過多)がある場合、症状は改善して楽になります。もう一つの役割は、大きい筋腫(5-10cm以上)や筋腫関連症状で生活に支障がある場合に行われる強力なLH-RH(Gn-RH) agonist(ゾラデックス、リュープリン)による偽閉経療法後の維持療法です。
毎日同じ時間に服用(携帯電話のalarmを設定して、服用時間のずれ30分以内に服用)すると、血中Estradiol(E2)濃度は10-40μg/mlまたはそれ以下に低下します(月経周期のある女性の通常のE2濃度は40-500 μg/ml)。筋腫の栄養源(Estradiol=E2)が減少するので、筋腫の成長が抑えられます、大きくなり具合が小さくなります。例えば、現在長径3cmの筋腫が無治療の場合、1-2年後に5-6cmになるところが、pill服用している場合は3,5cm-4cmに抑えられる、と言う具合です。食事管理と低用量pillのみで稀に筋腫が縮小することはありますが、多くの場合徐々に大きくなっていきます。月経(消退出血)量が増量して、貧血状態になった時点でpillでの治療は限界で、もっと強力な治療が必要です。その場合、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射、リュープリン注射) x 6回 (あるいはそれ以上)による偽閉経療法-> Pillまたは手術(筋腫核出)の2通りの方法があります。核出後は、再発予防で術後から妊娠希望時期または閉経まで低用量pill(または黄体ホルモン剤)内服継続です。
Pillの種類により、効果(月経量の減少、月経痛の改善の度合い)、及び副作用(主に吐き気)は大きく違います。副作用の出方は、服用者とpillとの相性によります。他の女性の反応は参考になりません。筋腫が発生する前の10代から服用開始すると、筋腫(及び子宮内膜症)の予防効果もあります。低用量pillは自己管理(水分を十分摂取、服用時間厳守)し、定期的に血液検査(Pill採血)で管理すれば、10代から閉経まで服用可能です。但し、喫煙者には禁煙して頂きます。肥満は自己管理(白いもの:白米、白い食パン、白いパスタは禁止、色のついた玄米、ライ麦パン、全粒粉パスタに変更)して下さい。毎年2回(少なくとも1回は)血栓が起こりやすい真夏(6-8月)と真冬(12-2月)にpill採血(Hormone状態で効果判定、血栓:d-dimer、肝機能等で副作用判定)を行います。Riskありと判断されたら、pillは休薬、または中止となります。45歳以上でも内服希望の場合は、本人がpillの事を理解され、risk管理できていれば継続可能です。
Pillは、脳(脳下垂体)を介して、卵巣の機能を停止させます。機能停止(卵巣がお休みする)するために、卵巣腫瘍や卵巣癌は出来ません(卵巣癌は100%予防可能)。卵巣機能は温存されます。子宮内膜症は予防され、筋腫への抑制効果もあります。従って、不妊症になりにくく、妊娠希望のある女性にとってはメリットが多いです。それが、欧米、Australia、Asiaの英語圏(先進国)で広く普及している理由の一つです。但し、pillの卵巣に対する抑制効果持続期間は24時間です。そのため、24時間毎に、一日一錠内服します。24時間を過ぎると、卵巣への抑制効果は薄れていきます。そして、25時間、26時間経ってしまうと (前日服用から1-2時間遅れると)、抑制効果はどんどん低下していきます。服用時間が2-3時間、あるいはそれ以上遅れる、またはその日飲み忘れると、pillの卵巣への抑制効果は消失します。抑制から解放された卵巣は、それまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように爆発的に女性ホルモン(Estradiol=E2)を分泌する場合があります。そのtimingでホルモン採血すると、女性ホルモン(Estradiol=E2)は、時間厳粛でpillを服用している場合の濃度(10-40pg/ml以下)ではなく、正常の濃度(40-500 pg/ml)に戻ったり、時には正常値を超える濃度 (500pg/ml以上)になることもあり危険です。服用時間がずれると不正出血(消退出血)が起こります。不正出血は、pillの卵巣への抑制効果が解除された(Pillが効かなくなった)signに過ぎず体には影響ありませんが、Pill服用のずれで女性ホルモン(Estradiol=E2)濃度が上昇した結果、乳癌のriskも、血栓のriskも上がる可能性があり危険です。
Pillは時間のずれなく服用した場合、卵巣癌、子宮内膜癌(=子宮体癌)が予防可能です。また遺伝子系統が同じ大腸癌のriskも下がることが分かってきました。2019年の時点で大腸癌は女性の癌死因の第一位ですから、pill服用のメリットは大きいです。また、Estradiolが低下(<10-40μg/ml)するために、血栓のriskも上がらず、理論的には乳癌(80%は女性ホルモン estradiolが原因)発症のriskが下がる可能性もあります。今後の追跡調査で乳癌発症の抑制効果が明らかになると思います。Pill服用時間厳守が如何に大切か理解して頂きたいです。Pillは時間厳守で服用すると、メリット(advantage)が多く、女性の強い味方です。
2) 黄体ホルモン療法(内服、子宮内器具)
・経口の黄体ホルモン製剤(デイナゲスト):女性ホルモン(Estradiol=E2)の効果を抑えて、子宮筋腫が増大するのを抑える効果があります。子宮筋腫の縮小効果はありません。保険適用が子宮内膜症、子宮腺筋症となっており、筋腫は適用外です。子宮筋腫に子宮内膜症が合併していれば、保険適用になります。デメリット(disadvantage)は薬価が高いことです。子宮筋腫に対する効果は低用量pillと同等ですが、価格が低用量pillの2倍以上しますので、当院では低用量pillが使用出来ない場合、ご本人と相談して処方するようにしております。
・ミレーナ(Mirena)は合成黄体Hormoneレボノルゲストレル(levonorgestrel:LNG)放出子宮内システム(levonorgestrel-releasing intrauterine system:LNG-IUS)です。LNGを含むシリンダーを備えたT字型のプラスチックフレーム(約3cm)で構成されており、黄体ホルモンLNG:20μg/dayが持続的に5年間放出されます。1990年にFinlandで承認され、2001年に米国FDAでも承認されました。日本では避妊用として2007年から自費で採用されました。その後2014年より「月経困難症」の治療薬として保険適用となりました。子宮内膜の発育を抑制することで内膜が薄くなり、過多月経や月経困難が軽減されます。子宮筋腫自体を小さくする治療ではありません。
Mirena挿入に際し、注意が必要です。経膣分娩の経験が無い女性では、挿入時に痛みで挿入を中止する場合があり、あまりお勧め出来ません。子宮頚管炎、クラミジア感染の既往のある方も強い痛みを感じる場合があり、適応外と思った方が良いです。粘膜下筋腫や、筋層内筋腫で子宮内腔が変形している場合、膣炎(程度によります)にかかっている場合、糖尿病、肝障害のある方等は挿入に際し、注意が必要です。希に、挿入したMirenaが脱出する場合もあります。子宮の大きさ、内腔の形も各人で異なりますが、Mirenaはサイズも形も一種類しかありません。大中小などのvariationが必要だと考えます。当院では、全ての女性に適合するvariationが出来るまで使用を止めています
・Nexplanon(etonogestrel implant):実は、Mirenaと同じく黄体Hormoneが持続的に放出される埋め込み型器具でもっと便利なものがあります。
上腕皮下埋め込み型Nexplanon(etonogestrel implant)です。Nexplanonの上腕への装着(implant)は安全で簡単です(Net参照)。Mirenaのような適応制限が少なく、出産経験の無い10代の女性にも適応可能です。Nexplanonが認可された場合、Mirenaに替わって日本でも普及すると思われます。1998年インドネシアで最初に使用されました。米国FDAでは2006年に承認。約20年前から、欧米の先進国だけでなく、100カ国以上で普及しています。Asiaでも普及していて韓国でも使用されていますが、日本と北朝鮮だけは認可されていません。日本での許認可の予定は全くありません。超後進国日本に住んでいると、本当に困ります。
3) LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス,リュープリン)
「LH-RH agonist」 と「Gn-RH agonist」は同じです。
・歴史:女性ホルモン(Estradiol)が関与する重大な疾患は乳癌です。また、男性ホルモン(Testosterone テストステロン)が関与する重大な疾患は前立腺癌です。LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス,リュープリン)は、本来これら二つの癌の治療薬です。乳癌の治療のためには、卵巣からの女性ホルモン(Estradiol)を、前立腺癌治療のためには、精巣からの男性ホルモン(Testosterone)をブロックする必要があります。その方法として今一番多く使われているのがLH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射, リュープリン注射)です。LH-RHとは性腺刺激ホルモン放出ホルモンのことです。
ゾラデックスは1976年にイギリスで開発され、日本では1991年6月に「前立腺癌」、1994年1月に「乳癌(閉経前)」の保険適用を得ています。婦人科で使用開始になったのは2000年10月です。
リュープリンは、米国FDAで1985年4月に前立腺癌治療薬として承認。日本では、1992年7月「前立腺癌」治療薬として承認、1994年7月「子宮内膜症」および「中枢性思春期早発症」治療薬として承認された。1996年10月「乳癌(閉経前)」および「過多月経を伴う子宮筋腫」治療薬として追加承認されました。ホルモン依存性の乳癌、前立腺癌の癌細胞が消失する程の強力なホルモン抑制効果があるなら、同じくホルモン依存性の子宮筋腫や子宮内膜症にも使用させて下さいと厚生労働省に御願いして保険適用が得られたということです。
その際に、癌では無いから、使用量を半減させられた経緯があります。しかも高額なので、使用回数の制限付きです。保険適用では、毎月1回で6回まで。その後、追加治療が必要なら、6か月間休薬後にまた6回出来ると規定されています。子宮筋腫や内膜症は癌ではないので、乳癌や前立腺癌と比較して、保険適用での使用量を大きく制限されてしまったと言うことです。医学的根拠と言うより、国の財源削減の目的も関与している可能性もあります。
・効果:LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射, リュープリン注射)は、女性ホルモン(Estradiol=E2)をほぼゼロにするほどの強い効果を有するホルモン薬です。乳癌、前立腺癌の治療薬として長年全世界で使用され、安全性、有効性が確立されているホルモン剤です。月経が一時的に止まるので、偽閉経療法と言われています。子宮筋腫の治療法の中で、子宮全摘以外では、最も有効で、尚且つ安全な治療薬で、現在の子宮筋腫の治療の中心的役割を担っています。LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射, リュープリン注射)なくして、筋腫の治療は出来ないと言うほど、必要不可欠の薬です。
・適応:女性ホルモン(Estradiol=E2)を下げる低用量pill(または黄体ホルモン剤)で管理不能な月経困難症を伴う子宮筋腫や巨大子宮筋腫に対する治療に使用されます。45歳前後以降では、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射, リュープリン注射)療法を保険適用の範囲内で上手く使用すれば、最終的に閉経まで持ち込んで手術をしないで逃げ切る事が可能です。また、子宮筋腫核出術を安全に行うための術前療法としても使用されます。術前は少なくとも6回、出来ればそれ以上注射すると、子宮への血流が低下し、筋腫も縮小するために、核出術中の出血量が少なくなり、残す子宮を沢山縫合しなくて済みます。即ち、残す大切な子宮を不必要に傷つけなくて済むと言うことです。医師は手術がやりやすくなり、子宮も沢山傷つけられず、患者様の術後の回復も早くなります。術前治療として行われたLH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射, リュープリン注射)と食事管理が著効して、時には手術が不要になる場合もあります。従って、妊娠まで時間的余裕があれば、保険適用を駆使して、LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射, リュープリン注射)の長期使用と食事管理で、筋腫核出術を回避することも不可能ではありません。
・注射の方法:初回投与は月経開始日から7日以内に行います。注射部位は、臍より下の脂肪が多い皮下です。注射された薬剤は徐々に放出され、長期間効果を発揮します。製剤により、有効期間は30日、90日、180日とありますが、婦人科領域(子宮筋腫、子宮内膜症)において保険適用で使用可能な薬剤は、ゾラデックス 1.88注射, リュープリン1.8(3.75)注射のみで、効果持続期間は約30日です。
図2:LH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス,リュープリン)の作用メカニズム
・LH-RH(Gn-RH)agonistの作用メカニズム(省略可能)
少し複雑な話になりますが、薬が効くメカニズムを説明しておきます。図2の右側を見て下さい。卵巣から分泌される女性ホルモン(Estradiol)および精巣から分泌される男性ホルモン(Testosterone)は、脳下垂体から分泌されるFSH/LH(性腺刺激ホルモン)によって分泌をコントロールされています。さらに、FSH/LHは、脳内の視床下部から分泌されるLH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)によって分泌が管理されています。
この説明はホルモンの流れを、下流から上流へと見たものですが、上流から下流への流れで言うと、LH-RH → FSH/LH → 女性ホルモン(Estradiol)/男性ホルモン(Testosterone)という順番でホルモンは分泌されます。そこで、この流れのいちばん上流であるLH-RHが働かないようにしてしまおう、というのがLH-RH agonistという注射剤です。Agonist(アゴニスト)とは作用薬という意味ですが、分かり易く言えば、“本物そっくりの偽物”です。LH-RH agonistは、LH-RHと似た構造の偽物で、本物のLH-RHの数10倍の強さで下垂体の受容体に結合し作用します。このため、本来結びつくはずのLH-RHがやってきても、既に偽物が受容体に結合しているために、本物のLH-RHは結びつくことができません。結果として、LH/FSHは分泌されなくなるしくみです。LH-RHの偽物を送り込んで、本物のLH-RHを働けないようにしてしまうのが、この注射剤です。
ここで注意することがあります。LH-RHの偽物であるLH-RH(Gn-RH)agonistの初回投与時(初回結合時)は、受容体が偽物を本物と勘違いして (気が付かずに) 一時的にLH/FSHを分泌してしまい、女性ホルモン(Estradiol)、男性ホルモン(Testosterone)、ともに増加します(flare up現象)。その結果、月経が止まるどころか、月経様の不正出血が起こります。時には、通常の月経より多量になる場合もあります。その後、2、3回と連続的に投与されることでLH-RH受容体が減少(down regulation)し、LHやFSHの分泌が抑制され、女性ホルモン(Estradiol)も男性ホルモン(Testosterone)も産生が低下します。注射剤になっているのは、飲み薬であると、肝臓で分解され薬としての働きを失ってしまう性質があるためです。
・子宮筋腫(子宮内膜症)に対する治療の回数
保険適用では、毎月1回で6回まで。その後、追加治療が必要なら、6か月間休薬後にまた6回出来ると規定されています。せっかく6回注射して筋腫が縮小している最中に一端治療中止。6か月休薬期間中無治療であると、元の大きさに戻ってしまいます。医学的な根拠に基づくprotocol (治療方法)ではなく、あくまでも日本の保険適用での取り決めだと思われます。
乳癌、前立腺癌では、ゾラデックスの場合は、 3.6mg/月x 5年(60回)、または10.8mg/3か月 x 5年(20回)です。リュープリンの場合は、3.75mg/月 x 5年(60回)、11.25mg/3か月 x 5年(20回)、22.5mg/6か月 x 5年(10回)注射が基本です。婦人科の2倍量で治療期間が10倍ですから、治療期間に投与される量は20倍です。乳癌、前立腺癌治療に於いて、骨粗鬆という合併症のために、LH-RH(Gn-RH) agonist(ゾラデックス、リュープリン)療法が中断されることはないようです。骨粗鬆問題は起こっていません。婦人科の20倍投与(注射)されている乳癌領域で骨粗鬆問題は起きていない。逆に考えると、婦人科での投与量は乳癌治療の1/20の量です。これでは骨粗鬆は起こりません。婦人科のゾラデックス 1,8 またはリュープリン 1.88の6か月投与で一端終了という方法では、治療を要する骨粗鬆は起こりませんし、そもそも十分な治療効果は得られません。乳癌治療のせめて1/4-1/2の保険適用の許可が出る(ゾラデックス 1.8 を2~5年間継続可能)と手術を受けなくて済む患者様は相当数増えると思います。
5年間閉経させると、さすがに子宮筋腫はかなり縮小する予想されます。また子宮内膜症は手術無しで完治することが多くなると思います。またLH-RH(Gn-RH)agonist(ゾラデックス注射、またはリュープリン注射)は、乳癌の薬ですから、婦人科で使用する場合の最も大きな「副作用」(というより副効果)は、「乳癌の予防」です。最大のメリット(advantage)かも知れません。
全国の多くの婦人科医が7回以上継続すべきと考えていると思います。日本は何事も対応が遅いので困りますが、その内、6回終了後の休薬期間が6か月から3~4か月に短縮され、また一息ついて、何らかの条件付きで12回連続まで(またはそれ以上)可能になると予想します。
乳癌や前立腺癌の様に、長期にわたり治療を継続する場合、血液検査(TRACP-5B)をして、必要ならVitamin D(エディロール)を内服する等の対応で、筋腫の大きさ(子宮内膜症の場合は、その程度)に応じて12回あるいはそれ以上投与しても問題ないと考えられます。今後保険適用での投与回数は改訂されるはずです。改訂されないと困ります。日本は何事も対応が遅いので、時間はかかると思います。
筋腫を除去(切除)する手術には子宮全摘(開腹、腹腔鏡)、筋腫核出(開腹、腹腔鏡)、経頚管的(径膣式)筋腫切除術(TCR:Transcervical resection:膣からのapproach)の3種類あります。
1) 子宮全摘 (開腹、または腹腔鏡)
子宮全摘が必要になるのは、子宮肉腫の疑いがある場合、巨大筋腫で深部静脈血栓症(DVT)、大出血や感染などの合併症を起こす可能性ありと判断された場合のみです。子宮筋腫の根治療法ですが、適応をよく考えて、手術を受けるか決めて下さい。50歳前後では基本的に手術自体が不要です。また、癌ではないので深部静脈血栓症(DVT)の症状がある等の場合を除き、緊急性はありません。考える時間はたっぷりあります。子宮全摘の術中術後の合併症(尿管損傷、膀胱損傷、腸損傷、術後腹腔内癒着、腸閉塞、膣出血、膣壁の不良肉芽増殖など)は決して希ではありません。また子宮全摘の手術術式によっては、将来直腸癌を発症した場合、直腸周囲のリンパ節郭清が困難になり、癌手術の根治性が低下する場合もあります。日本では子宮筋腫に対する子宮全摘を行い過ぎる傾向があります。子宮全摘が必要と説明されたら、2nd opinionを受けることをお勧め致します。子宮筋腫に対する色々な治療法の中でも、子宮全摘は例外的な治療と考え方が良いです。
子宮全摘のメリット(advantage)は、子宮筋腫核出術に比べて出血量が少ない、再発の心配がない、子宮頸癌、子宮内膜癌(=子宮体癌)を発症しない事などです。デメリット(disadvantage)は、妊娠する可能性がなくなる、喪失感が残る場合がある、術中術後の起こり得る全ての合併症等です。子宮全摘(正式には、単純子宮全摘出)は、婦人科領域に於いて基本的な術式で、難易度は高くないです。
子宮全摘出術には、子宮にたどり着く手法(approach)の違いにより、3種類あります。通常の開腹、腹腔鏡手術、さらに腹腔鏡手術の発展型であるロボット支援内視鏡手術があります。教育機関である大学病院や大規模の病院では、ロボット支援内視鏡手術を勧める傾向があります。但し、2023年3月の時点で、技術、安全性が必ずしも確立されていないので、積極的にはお勧め出来ません(富永 愛法律事務所 home page「ロボット手術は安全か」参照)。大学病院での死亡事故(2022年7月)だけでなく、死亡に至らない事故を含めると、ロボット支援手術による医療事故は増加の一途をたどっているようです。手術のapproachにこだわらないで下さい。通常の開腹手術で安全に行えば何も問題ありません。手術を受ける際は、複数の病院、複数の医師に意見を聞いてご本人が納得されてから受けて下さい。手術は「何処で受けるか」では無く、「誰が行うか」です。
注意すべき事 (子宮全摘しても月経は起こる?!)
純粋な子宮筋腫のみで子宮内膜症が無い場合、子宮全摘すれば、子宮がなくなるので月経もなくなり、月経困難症(過多月経等)は解決します。子宮筋腫に子宮内膜症が合併している場合は注意が必要です。子宮筋腫に合併している内膜症が子宮腺筋症のみ(子宮以外に内膜症が無い)の場合は、月経困難症(過多月経と生理痛)は術後消失します。しかしながら、子宮筋腫に骨盤子宮内膜症(頻度が多い)や卵巣子宮内膜症(チョコレート嚢腫)が合併している場合は、子宮全摘により過多月経は消失しますが、卵巣がある限り、生理痛は残ります。要するに、子宮での月経は消失しますが、お腹の中(骨盤内のダグラス窩や卵巣等)で起こっている月経は無くなりません。子宮を摘出したのに、生理痛が改善しない場合があることを理解して下さい。「子宮が無くても卵巣があれば月経は起こる」、ということをご確認下さい。
2) 子宮筋腫核出(切除)術 (開腹または腹腔鏡)
筋腫核出術は、妊娠の成立に障害となる筋腫(不妊症,不育症),妊娠の経過に影響(早産)する可能性が高い筋腫、およびホルモン療法で管理不能な月経困難症を有する筋腫を対象として行われます。治療目的に合わせて、有害な筋腫のみを取り除く手術であり、多数の筋腫全てを取り除く事が目的ではありません。残す大切な子宮、特に子宮内膜を傷つけないように(子宮内腔に入らないように)細心の注意をしながら、丁寧に「有害な筋腫」のみを取り除きます。明らかに「害の無い筋腫」は摘出不要です。無害な筋腫まで全て摘出するような手術をすると、筋層が弱くなり、将来妊娠した場合子宮破裂などの合併症を引き起こす可能性もあり、かえって危険です。手術の難易度はかなり高いです。摘出する筋腫の数が多い程、再発率は高いです。術後1-3年で元の状態に戻ることもあります。多くの場合、多発性の筋層内子宮筋腫です。粘膜下筋腫を合併する場合もあります。
手術が必要かの判断(手術適応の判断)は、医師により異なります。患者側は困ります。ある先生は筋腫核出が必要と判断。しかしながら、同じ筋腫を別の医師が診察すると、手術は不要となることは希ではありません。明確に言えることは、どんなに大きな筋腫でも、「筋腫があるために妊娠できない」ということは極めて希だということです。
以前私が経験したのは、20cm以上の腹部巨大腫瘍で進行卵巣癌と診断された20代の女性でした。腹水が少量の充実性腫瘍で、腫瘍内に変性、出血を伴い、MRI診断は卵巣癌でした。腫瘍マーカーCA125も高値で、毎週上昇。手術前日に腹部超音波で巨大腫瘍を詳しく診ていたところ、変性した巨大腫瘍付近に拍動する像を発見しました。本当に驚きました。心拍です。妊娠中CA125は継続的に上昇します。納得です。早速部長に「これは卵巣癌では無く、巨大変性筋腫ではないか」と報告し、卵巣癌として予定されていた手術「子宮全摘+両側付属器切除+大網切除+リンパ郭清」を中止しました。その後、激しい腹痛を訴えながらも33週まで持ちこたえて、無事帝王切開で出産されました。このように筋腫の長径が20cm以上あっても、「妊娠の成立」には関係しません。これは1例ですが、他にも長径10cm以上の筋腫を有する女性で妊娠した例は複数あります。ただし、この女性が妊娠していない状態で来院されたら、迷うこと無く、筋腫の切除が必要と説明すると思います。理由は「妊娠の成立」には影響ありませんが、妊娠の経過中に問題(変性や陣痛などによる疼痛)が発生し、37週まで持たないからです。
医師の技量により手術適応の判断に違いがあるので、「筋腫の切除や核出が必要」と判断されたら、2nd opinionをお勧めします。そして、最終的に「筋腫の切除、筋腫の核出」を受けることになった場合、いきなり手術するのでは無く、先ずLH-RH(Gn-RH) agonist(ゾラデックス、またはリュープリン)の注射により、閉経状態にします(偽閉経療法)。第一の目的は、子宮への血流を減らすこと、次いで少しでも筋腫を小さくする事です。偽閉経療法により、手術 (切除、核出)の際に出血量が少なくなり、残す子宮を沢山縫合しなくて済みます。即ち、残す大切な子宮を不必要に傷つけなくて済むと言うことです。
筋腫核出術のメリット(Advantage)は、正しい適応に基づいて核出術が行われた場合、妊孕性(にんようせい)が向上し(妊娠しやすくなり)、早産riskも改善されることです。デメリット(disadvantage)は子宮全摘術に比べて出血量が多いこと、出産が経膣ではなく帝王切開になること、術後腹腔内の癒着が起こりやすくなること等です。注意すべき事は、子宮筋腫を核出したからといって、「もう二度と筋腫が出てこない」訳では無いと言うことです。核出する筋腫の数が多いほど、再発率は高くなります。妊娠希望時期までに時間的余裕がある場合は、再発予防のホルモン療法(低用量pill、黄体ホルモン剤、LH-RH(Gn-RH) agonist等)を行うべきです。筋腫核出術後、無治療であると、多くの場合再発し、術後1-3年で手術前と同じ状態に戻る場合もあります。筋腫核出術後、直ちに妊娠希望される場合は、手術内容にもよりますが、手術から2-3か月後から(2回月経が来たら)、妊娠可能です。6か月も待つ必要はありません。
3) 経頚管的(経膣式)筋腫切除術(TCR:Transcervical resection:膣からのapproach)
粘膜下筋腫、筋層内筋腫で50%以上内腔に飛び出しているもの(粘膜下筋腫に近い筋層内筋腫)、筋腫分娩、およびAPAMに対して行われます。日本では通常入院(1-2泊)手術となります。この場合も、術前にLH-RH(Gn-RH) agonist(ゾラデックス、リュープリン)で偽閉経療法を4-6回行った方が、より安全です。メリット(Advantage)は、腟経由の手術なので手術の傷が残らない、腹部に傷がつかない、術後の痛みが少ない、手術時間が短い(30分前後)、術後2-3日で社会復帰が可能。最大のデメリット(disadvantage)は、手術中に子宮穿孔(子宮の壁に孔が開く)のriskがある事です。切除の根治性を高めようとするほど穿孔のriskは高くなり、穿孔を恐れるほど根治性は低くなります。子宮穿孔した場合は、修復のため開腹術に移行する事になります。その他のデメリット(disadvantage)は、入院が必要(1-2泊)、筋腫が大きい場合は、手術を数回に分けて行うことがある、そもそもTCRは粘膜下筋腫以外のものには適応にならないこと、等です。TCRも十分な臨床経験が必要です。
子宮の手術に抵抗がある方のために以下のような治療optionがあります。いずれも、筋腫がなくなる根治術ではありません。手術以外にも治療法があることを知っておいて頂ければ有り難いです。
1) 子宮動脈塞栓術(UAE)
血管造影の手技を用いて放射線科の医師が行います。本来は、子宮の疾患(頸癌、円錐切除後、子宮外妊娠、妊娠絨毛性疾患など)による大量出血を制御(止血)する治療法です。過多月経などの症状を有する子宮筋腫の手術前治療としてUAEを施行したところ、一部の女性で手術が不要になる程度まで症状が改善したと報告されたことから、1995年UAEが子宮筋腫と治療法のoptionの一つとして注目されるようになりました。
・治療対象は、過多月経による貧血症状等、症状のある筋腫。無症状の筋腫は対象外です。
・手技:局所麻酔を行い、皮膚に小さな切開(約5㎜)をいれ、そこから細い管(カテーテル)を子宮に向かう子宮動脈内に挿入して、血管が閉塞するような物質(塞栓物質)を注入し子宮への血流を遮断する治療法です。術後は約3-4時間安静が必要であること、それと術後12時間続く「塞栓後症候群」の管理のために入院が必要です。海外では日帰り手術です。
・治療効果:子宮筋腫が原因の過多月経、月経痛、頻尿などの症状は75%以上改善しますが、筋層内筋腫が消失することはありません。粘膜下筋腫が壊死して脱落し、消失することがあります。注意すべきことは、筋腫の縮小率です。筋腫の縮小率は「体積の縮小率」です。長径や直径の縮小率ではありません。UAEによる筋腫の縮小の程度は様々ですが、平均体積縮小率は50%前後です。例えば筋腫が球形だとすると、長径10cmの筋腫が8cmになった場合、8x8x8/10x10x10=512/1000=0.51 (縮小率 49%)です。即ち、縮小率50%とは、10cmの筋腫が8cmになった場合です。10cmの筋腫が5cmになるのではありません。因みに10cmが5cmになった場合、筋腫が球形だとすると、縮小率は125/1000=0.125 → 85%の縮小率になります。このようにはなりません。10cmの筋腫が8cmになると思って下さい。これに満足するか否かです。そもそもUAEは筋腫が原因の過多月経、月経痛、頻尿などの症状を改善する治療です。10cmの筋腫が2cmになるとか、あるいは消失することはありません。
・合併症:X線透視下で行われるので、放射線被曝します。また、UAE術直後から12時間前後経過すると、ほぼ全員に「塞栓後症候群」が起こります。症状は、非常に強い下腹部痛、腰痛、吐気・嘔吐、発熱等です。その他の合併症は、1) 術後の感染症->管理出来ない場合、子宮全摘になる場合あり、2) 深部動脈血栓症またそれに伴う肺動脈塞栓症->術後の安静が原因です。発症したら致命的です。3) 穿刺部位の損傷、血腫, 4) 造影剤アレルギー、5) 子宮出血、帯下の増加、筋腫の経腟的排出、6) 卵巣機能不全->閉経する場合あり、7) 次回妊娠への影響:自然流産、早産、胎盤機能不全、胎児発育不全、癒着胎盤、子宮破裂、産褥出血、胎位異常、帝王切開などの増加、等があります。
・UAE治療の適応がない筋腫:閉経(そもそも治療は不要)、45歳以上(LH-RH agonist等のHormone療法を閉経まで持続して逃げ切れる)、妊娠希望者、骨盤内感染症を有する場合(クラミジア感染など)、LH-RH(Gn-RH) agonist(ゾラデックス、リュープリン)、LH-RH antagonist (レルミナ)治療中 (治療後3か月以上経過したらUAE可能)、造影剤(ヨード)や塞栓用物質の成分に対するアレルギーを有する女性
2) 集束超音波療法(FUS: Focused Ultrasound)
MRIで病巣を撮影しながら、高周波の超音波を筋腫に集中的に照射し、その時生じる熱エネルギーで子宮筋腫の細胞を加熱して壊死させ、筋腫の縮小と症状の改善を目指した治療法です。子宮筋腫に対するFUS治療は保険適用外のため(2022年現在)全額自費にて治療が行われています。米国では2004年10月にFDA(米国食品医療局)により、治療法が承認されました。日本でも脳外科領域では、「手が震える本態性振戦」に対して2019年6月1日に保険適用となりました。FUSでは、治療の際皮膚の切開は不要で、ほぼ日帰り(または1泊2日)で治療できます。また、合併症も少ないのが利点です。治療する筋腫に条件があり、適応範囲が狭いことが難点です。
・FUSの適応
(1) 月経困難症を伴う子宮筋腫
(2) 手術を希望しない方、あるいは外科手術のリスクが高い方
(3) 筋腫の大きさは3cm-10cm、筋腫の数は3個まで
・FUSの適応外
(1) 骨盤領域および子宮に悪性腫瘍がある、または可能性がある
(2) 骨盤領域に感染症がある
(3) 体内に金属性の医療機器を埋め込んでいて、MRI検査ができない方
(4) 妊婦・妊娠の可能性がある場合
・治療方法
(1) MRI装置の中で、うつぶせの姿勢になります。
(2) MRIで画像を確認しながら、おなかの下から超音波を子宮筋腫に照射します。
(3) 治療時間はおよそ3-4時間です。体を動かすと照射部位がずれるので、治療中は同じ姿勢を保つことが求められます。これが結構つらいです。
(4) FUSの治療は、日帰りか、1泊2日程度です。
ほとんどの場合、治療翌日から通常の生活を送ることが可能です。
(5) 治療後、筋腫の縮小には時間がかかります。
(6) 治療の効果が得られない場合や、再発した場合には、追加治療が必要になることがあります。
・FUSの合併症
(1) 月経痛のような痛みを感じることがあります。
(2) 治療中(3-4時間)同じ姿勢をとるため、体の節々に痛みを感じることがあります。
(3) 仙骨前面に近い筋腫を照射する際には、足の痛みや刺激を感じることがあります。
(4) 治療後数日で痛みはなくなりますが、まれに仙骨神経の損傷がみられることがあります。
(5) 治療後、皮膚に熱を感じたり、皮膚が赤くなったりすることがありますが、1週間程度でほとんど改善されます。
・メリット(Advantage)
(1) おなかに傷ができない
(2) 日帰り治療も可能(治療時間3~4時間)
(3) 重篤な合併症が少ない
(4) 社会復帰が早い
・デメリット(Disadvantage)
(1) 妊娠を希望する場合には適用できない
(2) 適用できる筋腫が限定される(筋腫の位置、大きさ、個数など)
(3) 症状改善に時間がかかる
(4) 再発する可能性がある
(5) 保険適用外のため、自費診療で高額となる
(6) 実施可能な施設が非常に少ない
3) マイクロ波子宮内膜焼灼術(MEA: microwave endometrial ablation)
過多月経のために貧血、動悸、息切れ等の症状が出現し、日常生活に支障をきたす状態に対する低侵襲治療法です。細い器具(applicator)を子宮の中に入れて、尖端からマイクロ波(電磁波)を照射して子宮内膜全体を熱で焼灼(ablasion)することにより加熱壊死させ、月経血量を減少させることを目的とした治療です。即ち、標的(Target)は子宮内膜です。筋腫に対する治療ではありません。簡単に言うと「子宮内膜を焼く治療」です。従って、子宮筋腫とは無関係な機能性過多月経や、血液凝固不全による過多月経も保険治療の対象になります。2012年にMEAが保険適用となり、子宮筋腫や子宮腺筋症による過多月経の治療にも用いられるようになりました。
・適応
(1) 子宮筋腫による過多月経。
(2) 機能性過多月経や、血液凝固不全による過多月経
(3) 過多月経で子宮の手術を希望しない方、あるいは外科手術のリスクが高い方
(4) 妊娠・出産を希望しない過多月経で困っている方
・適応外
(1) 子宮内膜異形増殖症、子宮内膜癌がある場合
(2) 子宮筋層の厚さが10mm以下の部分がある場合
(3) 子宮筋腫のために子宮内腔が変形し、すべての子宮内膜にマイクロ波アプリケーターが容易に到達できない場合
(4) 妊娠希望がある場合
・治療方法
手術室で全身麻酔または静脈麻酔を受けます。アプリケーターを子宮の中に挿入し、子宮内膜全体にマイクロ波を照射します。通常の子宮腔の場合は、子宮内膜をすべて照射するためにかかる時間は5-10分程度です。治療時間は照射する子宮内膜の面積や子宮筋腫や腺筋症による変形等により変わりますが、おおよそ数十分です。日帰り手術も可能ですが。全身麻酔を行うため入院(1-2泊)する施設が多いです。MEA翌日から通常の生活が可能です。
・合併症
(1) 水様性のおりものが多量に出てくる。術後4週間続きます。
(2) 下腹部の鈍痛。鎮痛剤で管理可能。翌日には消失
(3) 子宮内に血液が溜まる子宮留血症が発生することがあります。
・メリット
(1) 経膣手術なので、手術の傷は出来ない。勿論おなかに傷ができない。
(2) 治療時間が短い(数十分以内)
(3) 入院期間が短い(日帰り手術も可能)
(4) MEA翌日から通常の生活が可能
・デメリット
(1) 妊娠希望者には適応がない。
(2) 過多月経が再発することがある。治療効果が永久的ではない。
(3) 実施している施設が限定的。