婦人科の特徴的な症状は、分泌物=おりもの(出血以外)、出血、痛み、腫瘍(腫瘤)=でき物の4つです。これに無症状を加えると婦人科の症状(signs)は5つのグループに分類されます。
腫瘍(癌、良性のポリープ)、炎症 (クラミジア、淋病など)、ホルモン異常の3つの可能性があります。
どこか痛い場合、原因は腫瘍 (良性でも悪性でも起こりえる)か、炎症です。腫瘍では、圧倒的に卵巣の良性腫瘍が多いです。特に腫瘍の中身が肉質の場合(奇形腫、線維腫、莢膜細胞腫など)、卵巣が捻転して(ねじれて)かなり強い痛みが生ずる事(救急車依頼必要)もあります。中身が液体(漿液性、粘液性)の嚢腫(嚢胞)では、捻転しても、我慢出来ないほどの痛みは生じません。中身が血液の卵巣子宮内膜症(チョコレート嚢腫)は、周囲と癒着することが多く、捻転することは極めて希です(先ずありません)。卵巣腫瘍が悪性(卵巣癌)の場合、周囲に浸潤、癒着することが多く、捻転しにくく、痛みというより「張った感じ」「膨満感」の方が多いです。子宮自体が痛むことは希です。子宮筋腫(特に漿膜下筋腫)でも捻転して痛みを生ずることがありますが、卵巣嚢腫(奇形腫)の捻転のような強い痛みは生じません。
炎症で多いのは、クラミジアです。痛みの特徴として、腹腔内のリンパの流れから、主に右下腹部が痛くなることが多いです。また、痛みの部位もピンポイントで「ここが痛い」ということはなく、特定されず、痛みの位置が移動することもあります。また、痛みは疲れた時に出てくることが多く、無治療でも十分に休息をとると軽減、消失することもあります(治癒はしていません)。また特徴として、断続的な水っぽいおりもの(水様性帯下)や不正出血です。クラミジア感染では、肝臓の周囲に膿を形成すると入院治療を要する場合もあります (Fitz-Hugh−Curtis Syndrome:フィッツ・ヒュー・カーティス症候群).
でき物は外陰部や膣の入り口にも出来ます。小さなものでは、コンジローマ(無症状)、ヘルペス(痛みを伴い、腫瘤というより潰瘍のような湿疹)、細菌感染による膿瘍(膿の塊)等。悪性では閉経以降に多い外陰癌。初期症状は痒みです。体内の腫瘤(腫瘍)で触れるものは、子宮筋腫、子宮肉腫、卵巣腫瘍です。因みに、卵巣腫瘍、子宮筋腫は触れない事の方が多いです。
実はこれが一番怖いかもしれません。婦人科の癌 (子宮頸癌、子宮内膜癌、膣癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌等)、いずれも進行癌の状態でもI―II期では無症状の場合が多いです。進行して初めて不正出血(頸癌、内膜癌、卵管癌、膣癌、外陰癌)、水様性帯下 (卵管癌、内膜癌)、粘液性帯下 (頸部腺癌)、腹部膨満(卵巣、卵管、腹膜癌)等の症状が出現します。進行癌の状態では、手術に加えて抗癌剤治療も必要になり、治癒率も100%ではなくなるので、やはり年に一度は正確な定期検診が大切です。